離婚の進め方 妻からの場合で予期せぬトラブルを防ぐために必要なことは?

夫と離婚したい場合、離婚すること自体は離婚届を提出することで簡単にできますが、離婚後に生活は大きく変化するため、十分な準備をしないまま離婚を進めると、思わぬトラブルが発生する可能性があります。

今回は、妻から離婚を申し出た場合で、離婚する際の予期せぬトラブルを防ぐために、離婚を切り出す前に準備しておくことや、家を出る適切なタイミング子どもがいる場合の注意点について、詳しくお伝えします。

離婚したいと思ったら切り出す前にやっておくこと

ここでは、離婚を切り出す前に女性がやっておくべきこと6つをご紹介します。

①本当に離婚すべきかもう一度冷静に考える

離婚を切り出そうと決意したときは、冷静さを失っていることも多いです。離婚は一度決めると元に戻るのは難しいので、あとで後悔しないためにも、一旦心を落ち着けて次の点について考えてみてください。

もう夫に未練はないのか

夫婦関係の改善はもう期待できないか

子どもが離婚を理解してくれ、離婚後に子どもの心のケアはできるか

離婚後の生活費や収入、住まいの確保などの目途はついているか

困ったときに相談できる人はいるか

離婚後のストレスに対処できるよう精神的に自立できているか

離婚後の老後の資金や子どもの教育費などのプランを立てているか

~離婚はどうしても感情的に決めてしまいがちなので、一歩引いて、自分の状況を見つめ直すことが大切ですね。

②家族や友人、カウンセラーや弁護士などの専門家に相談する

家族や友人に話を聞いてもらうと、自分の状況を説明することで考えが整理できるため、冷静さを取り戻せる可能性があります。

離婚問題に詳しいカウンセラーや弁護士に相談すると、冷静で客観的な判断から役立つ情報やアドバイスを提供してもらえるので、とても助かります。

自分一人で悩んでいるだけでは、解決しない場合は、信頼できる人に相談してみましょう。

〜離婚の問題は人には話しづらいものですが、一人で抱え込まずに信頼できる人に思い切って相談してみましょう。

③夫に請求できるお金について調べ確認しておく

財産分与・慰謝料・養育費・婚姻費用など、離婚の際に夫に請求できるお金について、しっかり調べて、把握しておくことが大切です。

「財産分与」は、婚姻中に夫婦が協力して築いた財産を分け合う制度です。原則として2分の1の割合で分けられます。

「慰謝料」は、夫が不倫やDVなどを行った場合に、精神的・肉体的苦痛に対する損害賠償として受け取れるお金です。受け取るには証拠を集めておく必要があります。

「養育費」とは、子どもが成人するまでの生活費や教育費を指します。夫が親権者でなくなっても法的な親子関係は続くため、夫の扶養義務は残ります。

養育費の金額は基本的に夫婦の合意で決まり、家庭裁判所の「養育費算定表」が目安として利用されています。

「婚姻費用」とは、離婚前に別居をする際、夫が妻に支払う生活費を指します。離婚が成立するまでの間、この費用を受け取ることができます。

離婚の原因が夫の不倫やDVの場合、慰謝料を請求できる可能性があります。この場合、不倫やDVの事実を客観的に証明するための、証拠が必要になります。

夫が不倫相手とラブホテルに出入りしている動画や写真、メールやSNSのやり取りのスクリーンショットや写真、DVの診断書、警察に相談したときの記録など、可能な限りの証拠を集めておきましょう

〜お金の問題は煩雑で悩ましいですが、あとで苦労しないようにしっかり把握しておきましょう。

④仕事を探したり、貯金して離婚後の生活基盤を確保しておく

女性の多くは、離婚後の生活を安定させるのに苦労します。専業主婦の場合は、スキルアップや職探し、パートなどの非正規雇用で働いている場合は、転職して収入を増やすなどを目指しましょう。

子どもがいる場合は、シングルマザーが受けられる手当や減免制度について調べておきましょう。

シングルマザーが受けられる手当

児童手当
児童扶養手当
児童育成手当
母子家庭の住宅手当
母子家庭(ひとり親家庭)医療費補助制度
子ども医療費助成

シングルマザーが受けられる減免制度

寡婦控除
国民健康保険の免除
交通機関の割引制度
上下水道料金の割引
保育料の減免

〜少しでも生活が安定するように、できることを一つずつやっていくことが大切ですね。

⑤新居を探しておく

離婚後に住む場所を見つけておくことも重要です。もし実家に頼れる場合は、一時的に実家に身を寄せる方法もあります。

子どもと一緒に住む場合は、治安や利便性、保育園や学校、職場からの距離なども考える必要があります。

離婚と引っ越しを同時に経験することになるため、子どもが負担を感じないよう、精神的なケアや子どもが転校するタイミングの調整なども必要です。

現在の住居が持ち家でそのまま住み続ける場合、返済中のローンなどの負担の問題もあるため、財産分与の話し合いではこの点についてもしっかり決めておきましょう。

〜専業主婦の方や、ひとり暮らしの経験がない方には就職や新居探しのハードルは高いですが、子どものためにもここは踏ん張りどころですね。

⑥離婚届不受理申出をしておく

離婚を切り出して話し合いをしている最中に、夫が同意を得ないまま勝手に離婚届を提出してしまう可能性があります。その場合、養育費や財産分与など、重要なことが決まらないまま離婚が成立してしまい、妻と子どもが不利な立場に置かれる恐れがあります。

離婚が成立してしまうと、取り消すのに大変な手間がかかります。それを防ぐために、あらかじめ「離婚届不受理申出書」を提出しておくことをおすすめします。不受理申出書を役所に提出しておけば離婚届は受理されず、離婚は成立しません。

〜まだ離婚に応じていないのに離婚届を出すなんて勝手な人もいるんですね。念のため、不受理申出書のことは、頭に入れておきましょう。

家を出るタイミングは?

離婚前に、自分が先に家を出ると不利になる場合もあるのでは?など、家を出るタイミングに迷っている方もいますよね。

ここでは、離婚したいと思っている場合の家を出るタイミングについてご説明します。

離婚の前に家を出る

法律上では、夫婦に「同居義務(民法752条)があり、この義務に違反した場合、相手から「同居調停」を申し立てられる可能性があります。ただし、相手が別居に同意している場合や、別居に正当な理由がある場合は、家を出ても同居義務違反にはなりません。

正当な理由とは、相手の浮気や不倫、暴力やモラハラ、夫婦間の深刻な不和などで、正当な理由がないのに一方的に家を出た場合、同居義務違反となります。

夫が家を出て専業主婦の妻に生活費を渡さない、浮気相手のもとに行くなどが、同居義務違反となり、相手に対して慰謝料を支払う義務が生じることがあります。

同居義務違反になってもならなくても、家を出た際に、無理やり家に連れ戻されることはありません。同居義務を果たさせるためには、家庭裁判所で「同居調停」を申し立てて話し合うこともできますが、裁判所が同居を強制することはできません。

離婚の前に家を出た場合、正当な理由があれば、不利にはならず、相手から同居調停を申し立てられたとしても、無理に家に連れ戻される心配はありません。

別居の準備ができた時

家を出るタイミングを決めるときには、別居の準備が整っているかが重要です。

別居する際の荷物の整理や引っ越し費用、別居後から離婚が成立するまでの生活費も必要です。子どもを連れて行く場合は、子どもへの説明や納得を得ることも必要です。

同居しているうちに、別居後に集めるのが難しい財産分与や慰謝料請求に関する資料を、集めておくことも大切です。これらの準備が、すべて整ったときが「家を出るタイミング」となります。

〜周りでも、家を出る時の準備が大変だった、という話をよく聞きます。あとで夫のいる家に戻らなくて済むように、慌てずにしっかり準備しておくことが大切です。

相手が同意してくれない場合

離婚したくても、どうしても夫が同意してくれない場合、いったん家を出て、夫と物理的、心理的な距離を置くことで、離婚に向けて相手の気持ちが変わるケースはよくあります。

DVやモラハラの被害を受けている場合

夫から、DVやモラハラを受け続けると深刻な精神症状が引き起こされたり、負傷したり、最悪の場合命を落とすこともあります。子どもがいる場合はその影響が子どもに及ぶ可能性があります。

暴力や精神的虐待を行う夫に対して、離婚したいと伝えても応じないケースが多いです。DVやモラハラを受けている場合は、自身や子どもの安全を最優先に考え、少しでも早く家を出ることをおすすめします。

〜このケースは自分や子どもの命に関わることなので、一刻も早く家を出ましょう。緊急的な対応としてシェルターを準備している行政もあるので、行政の相談室に連絡してみましょう。

家を出るタイミングでしておく手続き

家を出るタイミングでしておくべき手続きは次のようになります。

郵便物の転送届をする

別居後に郵便物が以前の住所に届くと、相手に内容を見られて、詮索されたり、嫌がらせをされる可能性があるため、郵便物の転送届を出しておきましょう。手続きは郵便局に転送届を提出する方法と、インターネットで申し込む方法があります。

住民票の転出・転入届をする

家を出る際は、住民票の移動も忘れずにしてください。同じ市区町村での引っ越しであれば、役所での手続きは簡単ですが、他の市区町村の場合は、住所地の役所で「転出証明書」を取得してから、引っ越し先の役所で「転入届」を提出する必要があります。

DVを受けていて相手に新しい住所を知られたくない場合は、身を守るために相手があなたの住民票や戸籍附票を閲覧できないように、役所に申し出てそのための手続きをしておきましょう。

子どもの児童手当の受取人の変更をする

小中学校に通う子どもを持つ場合、行政から児童手当を受け取っている世帯がほとんどで、手当金は「世帯主」である夫の名義の口座に振り込まれています。

妻が子どもを連れて家を出ても、自動的に妻の口座に振り込まれるわけではありません。

住民票の移動とともに、児童手当の受取人変更をしておく必要があります。

生活保護の相談をしておく

収入のない妻が子どもを連れて別居した場合、夫がすぐに生活費を支払ってくれるとは限らず、生活に困窮するケースがあります。すぐに働けない場合は、福祉事務所に相談して、生活保護費を受給してください。

離婚後に子どもの親権者になれるか心配な方は、生活保護を受給している場合も子どもの親権者になることは可能なので、安心して行政の福祉サービスの利用を検討してください。

〜家を出る時はいろいろ手続きがあって、大変かもしれませんが、あとで困らないようにぜひやっておきたいですね。

子供がいる場合の注意点

子供がいる場合、家を出る際には、当然子どものことも考える必要があります。相手が「親権を絶対に譲らない」と言っている場合、無理に子どもを連れて別居すると「未成年者略取(刑法224条)」にあてはまり、違法な「連れ去り別居」とみなされることがあります。

ここでは、家を出る際に子どもを連れて行くことが違法となるケースと、違法とならないケースについて説明します。

子供を連れて行くことが違法となるケース

次のような場合は、家を出る際に子どもを連れて行くことが、違法と判断される可能性があります。

普段子どもの世話をしていないのに、突然子どもを連れて行った場合。

子どもが今の家に住みたいと望んでいるのに、無理に連れ去った場合。

子どもの保育園や幼稚園に迎えに行き、泣き叫ぶ子どもを無理に車に乗せて連れ去った場合。

子どもを連れ行く際、相手や子どもに暴力をふるった場合。

子どもを連れて家を出ても違法とならないケース

同居中に、相手が子どもを虐待していた場合。

自分が相手から暴力を受けており、子どもも怯えていた場合。

ある程度の年齢に成長した子ども自身が「家を出たい」と望んでいた場合。

普段から子どもの面倒を見ている人が子どもを連れて出た場合。

夫婦のどちらが子どもの親権者になれば子どものためになるかを最優先に考えて、決めることが重要です。夫婦の意地や見栄だけで決めるべきではありません。

相手が親権者になった方が、子どもにとって良い環境を与えられるのであれば、たとえ、寂しい思いをしても、相手に譲ることも必要です。

~普段から、子どもの面倒を見ていないのに急に連れて行ったりしたら、子どもが驚いて泣き叫ぶのも無理はないですよね。親の都合ばかりを押し付けず、子どもの幸せを一番に考えましょう。

まとめ

夫と離婚したい場合に、準備しておくべきことや別居のタイミング、子どものいる場合の注意点についてお伝えしました。予備知識を身につけておくことで、離婚後の生活を安心して過ごせるようになります。

感情に任せて勢いで離婚を切り出すのではなく、しっかり準備してスムーズな離婚を目指しましょう。

 

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