夫と離婚したら、扶養家族だった自分の健康保険はどうなるのか、手元の保険証や子どもの保健証がそのまま使えるのか、気になる方も多いでしょう。
そこで今回は、離婚後の健康保険(保険証)の切り替え方法について、妻だった女性の立場から状況別に詳しく説明します。
離婚後に新しい健康保険に切り替えずに放置すると、医療費が全額自己負担になり、未加入期間の保険料をまとめて請求されるなど、大きなデメリットがあります。
後で手続きをすれば支払った金額の7割は戻ってきますが、一時的であっても多額の出費は離婚後の生活に大きな負担となります。
離婚後の予期せぬ出費を防ぎ、速やかに健康保険の切り替え手続きをするために、本記事を参考にしていただければ幸いです。(離婚、保険証、切り替え
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離婚したら保険証を確認
健康保険とは、病気や怪我、出産、死亡時などにかかる医療費の一部を国や保険組合が負担する公的医療保険制度です。
日本では「国民皆保険制度」により、すべての国民が健康保険に加入することが義務付けられています。
健康保険には大きく分けて「社会保険」と「国民健康保険」の2種類があります。
1.社会保険
社会保険は、企業や自治体が運営する保険で、会社員や公務員が加入します。社会保険には「扶養」の制度があり、年間収入が一定以下の扶養家族は個別に保険料を支払う必要がありません。
2.国民健康保険
国民健康保険は、市区町村が運営する保険で、自営業者やフリーランス、無職の人が加入します。国民健康保険には「扶養」の制度はなく、世帯全員が保険料を支払う必要があります。個々の保険料は世帯全体の所得に基づいて計算され、世帯主がまとめて支払います。
自分が加入している健康保険の種類がわからない場合は、手元の保険証の左上に記載されている保険証名を確認しましょう。
保険証名が「健康保険被保険者証」であれば、社会保険に加入しています。一方、「東京都(〇〇県)国民健康保険被保険者証」であれば、国民健康保険に加入しています。
〜普段、保険証に書かれている内容を詳しく見ていないことも多いですよね。加入している保険の種類は簡単にわかるので、しっかり確認しておきましょう。
離婚後の保険証の切り替え方法
夫の扶養家族であった人が離婚すると、婚姻中に使用していた健康保険証は無効になります。健康保険の切り替え手続きは自動的には行われないため、自分で手続きを行う必要があります。
ここでは、ケースに分けて切り替え手続きについて詳しくご説明していきます。
加入している保険の種類や加入状況によって手続きが異なるため、自分の状況に合わせて確認してください。
夫の勤務先の社会保険に扶養家族として加入していた場合
専業主婦やパート勤務などで収入が一定以下の場合、多くの方は夫の社会保険の被扶養者として加入していますが、離婚すると夫の扶養から外れるため、自分で新しい健康保険に入り直す手続きが必要になります。
まずは、夫が勤務先で「健康保険被保険者異動届」を提出し、妻や子どもが扶養から外れる手続きを行います。「健康保険被保険者異動届」が受理されると、健康保険の切り替えに必要な「資格喪失証明書」を取得できます。
状況別の健康保険の切り替え方法を、以下で具体的に説明します。
1)離婚後に自分が就職して会社の健康保険に加入する場合
離婚後に就職して会社の社会保険に加入する場合は、取得しておいた「資格喪失証明書」を勤務先の担当部署(人事など)に提出してください。担当部署で新しい社会保険の加入手続きを進めてくれます。
2)離婚後すぐに就職せず国民健康保険に加入する場合
離婚後に自営業者として働いたり、仕事をせずに貯蓄で生活したりする場合は、国民健康保険に加入する手続きが必要です。以前加入していた保険の資格喪失から14日以内に、取得しておいた「資格喪失証明書」を市区町村の役場に提出してください。
3)離婚後すぐに就職せず親などの扶養に入る場合
親が会社員の場合は、「資格喪失証明書」を親の勤務先に提出し、親の扶養家族として社会保険に加入する手続きをします。
親が自営業者の場合、国民健康保険には扶養制度がないため、親の世帯員として自分で国民健康保険に加入する必要があります。以前加入していた保険の資格喪失から14日以内に、市区町村役場に「資格喪失証明書」を提出しましょう。
〜いずれの場合も、まずは夫に勤務先へ「健康保険被保険者異動届」を提出してもらい、「資格喪失証明書」を取得することが必要です。元夫にはさまざまな事務手続きを依頼しづらいかもしれませんが、スムーズな離婚のためにも、ここは頑張ってお願いしましょう。
離婚前から自分の勤務先の社会保険に加入していた場合
離婚前から働いていて、自分の勤務先の社会保険に加入している場合、新しい保険に加入したり、脱退したりする手続きは不要です。ただし、離婚によって苗字が変わる場合は、担当部署に申し出て、別途手続きを行ってください。
夫が自分の扶養に入っていた場合は、扶養を外して「資格喪失証明書」を取得し、夫に渡します。子どもがいて、離婚後に子どもを扶養しないのであれば、子どもの「資格喪失証明書」を取得する必要があります。
離婚前から世帯主として国民健康保険に加入している場合
国民健康保険では世帯主が保険料を支払う仕組みになっているため、離婚前から自分が世帯主として国民健康保険に加入している場合、新たな加入や脱退の手続きは不要です。
離婚前に夫を世帯主とする国民健康保険に加入していた場合
夫が世帯主として国民健康保険に加入していた場合は、新たに自分が世帯主となって、国民健康保険に加入する必要があります。市区町村役場で世帯変更の手続きを行ってください。
また、離婚に伴い現在の住まいから他の市区町村に転居する場合、次の手続きが必要です。
・国民健康保険資格喪失届 ⇒ 転出元の市区町村役場に提出
・国民健康保険加入手続 ⇒ 転出先の市区町村役場に提出
離婚後の子どもの健康保険(保険証)について
離婚後の子どもの健康保険については、以下のように対応してください。
子どもが夫の扶養に入っていた場合、離婚しても扶養家族として健康保険に加入し続けることができ、今までの保険証をそのまま使えます。ただし、国民健康保険は世帯ごとの取り扱いとなるため、子どもは別居している父親の保険には加入できません。
離婚後に自分で子どもを引き取る場合は、子どもの健康保険も切り替える必要があります。子どもが夫の扶養に入ったままだと、手続きなどで夫と連絡を取る必要が生じる可能性があり、それを避けたい場合は切り替え手続きを済ませておくと良いでしょう。
その場合は、夫を通じて子どもを元夫の扶養から外す手続きを行い、「資格喪失証明書」を取得し、状況に応じて健康保険に加入し直します。
・離婚後に自分が就職する場合
会社に申請して子供を扶養に入れ、子どもの分の保険証を発行してもらいます。
・自分はすぐに就職しない、または自営業を始める場合
国民健康保険に加入することになるため、自分と子どもの加入手続きを市区町村の役場で行います。
離婚後の健康保険についてのよくある質問
ここでは、離婚後の健康保険に関するよくある質問をまとめました。
離婚後に切り替えしていない保険証を使ったらどうなりますか?
夫の扶養から外れて新しい健康保険に切り替えた場合、新たな保険証が届くまでに時間がかかることがあり、その間、誤って離婚前の無効となった保険証を使ってしまうと、後日、自己負担分を除いた医療費を返還しなければなりません。
※総医療費10,000円の場合、自己負担分3,000円+保険負担分7,000円なので、7,000円の返還が必要。
このような状況を避けるためにも、離婚後はできるだけ速やかに健康保険の切り替え手続きを行い、古い保険証は必ず返却しておきましょう。
健康保険の切り替え中に医療機関を受診したい場合どうすればよいですか?
健康保険の切り替え手続き中は、無保険状態となり、新たな保険証が届くまでの間の医療費は全額自己負担となります。
切り替えが完了した後に、別途手続きを行うことで支払った医療費を返還してもらえます。切り替えが間に合わない時に医療機関を受診する必要がある場合は、後日医療費の還付請求を行ってください。
〜新しい保険証が届くまで、医療機関では古い保険証を使わずに、きちんと事情を説明してから受診すれば大丈夫ですね。
離婚後の保険料が支払えなくなったらどうなりますか?
保険料を未納のままにしていると、医療費が全額自己負担となったり、最悪の場合、財産を差し押さえられたりすることがあります。
離婚後に経済的な理由などで保険料が支払えなくなった場合、保険料の減額や免除を受けられる可能性があります。また、一括払いが難しい場合は分割払いが認められることもあります。
国民健康保険料は、前年度の所得額、被保険者数、世帯構成などによって決まり、世帯全体の所得額が一定以下の場合は7〜2割減額されます。この軽減は、毎年4月や保険の加入時に自動的に適用されるため、申請手続きは必要ありません。
失業や災害などで収入が大幅に減少した場合や、病気で働けない場合などでは、保険料の全額または一部が免除されることがあります。この場合は、自分で市町村の窓口で手続きをする必要があります。
保険料の軽減の割合は、自治体によって異なることがあります。保険料が支払えなくなったら、早めに市区町村役場の国民健康保険課窓口に相談してください。
~適切な手続きを行えば、離婚後の経済的なリスクを最小限に抑えることができるので、
実際に困ったときは、役場の窓口を積極的に利用しましょう。
離婚後もしばらく元夫と同居する場合元夫の扶養に入ったままでもよいですか?
離婚後は、元夫と同居していても戸籍上のつながりはないため、扶養に入ったままでいることはできません。同居しているからといって、健康保険の切り替え手続きを怠ると、無保険状態となり、かかった医療費は全額負担となるので注意が必要です。
〜離婚後も同居を続けていると、夫との関係にけじめがつきにくく、必要な事務手続きも滞りがちです。同居解消後に困らないように、早めに対処しておくことをおすすめします。
まとめ
今回は、離婚後の健康保険(保険証)の切り替え方法について、状況別に詳しくご紹介しました。
夫の勤務先の社会保険に扶養家族として加入していた場合、離婚すると扶養は外れるので、新しい健康保険に加入するための各種変更手続きが必要です。
自分で勤務先の社会保険や国民健康保険に加入している場合は、特に手続きは必要ありませんが、離婚後に子どもを引き取る場合は、子どもの健康保険を切り替える必要があります。
いずれの場合も、必要な手続きを怠ると想定外の多額の出費や不都合が生じることがあるため、手続きは忘れずに行いましょう。
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