離婚する原因は様々です。経済的な自立が難しい状態で離婚に至るケースも多いでしょう。ここでは、特に苦労している母子世帯に着目してみました。
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離婚割合は日本では何割?世界とも比較
現在、日本では3組に1組の夫婦が離婚している、といわれています。2023年の厚生労働省の調査によれば、婚姻件数に対して離婚件数の割合が38%となっています。
【令和5年集計結果】
件数 | 前年度比 | 増減率 | |
婚姻 | 489,281 | 4,965 増 | 2.6% |
離婚 | 187,798 | 30,542 減 | △5.9% |
厚生労働省人口動態統計速報(令和5年12月分)より作成
統計によれば、昭和25年以降、離婚件数と離婚率は増加傾向にありましたが、平成15年頃からは減少傾向が続いています。
平成17年から令和2年までの都道府県別の離婚件数と離婚率を見ても、離婚件数は減少し、離婚率も低下しています。
離婚件数の年次推移 -昭和25~令和2年- |
都道府県別離婚件数・離婚率 -平成17年・令和2年- |
出典:厚生労働省「令和4年度離婚に関する統計の概況」
昭和25年から令和4年までの統計によると、特に20代後半から30代の幼い子供を持つ女性の離婚率が高い傾向が見られます。
出典:厚生労働省「令和4年度離婚に関する統計の概況」
厚生労働省「人口動態調査」より作成
1995年の主要な国の離婚率を見ると、ロシアやアメリカの離婚率が特に高いことが分かります。年代別の離婚率では、日本やフランスでは20代後半から30代が最も高く、他諸国では20代前後の若い世代の離婚率が高い傾向が見られます。
主な国の離婚率(人口千対) -1995年-
主な国の妻の年齢(5歳階級)別離婚率(人口千対)
出典:厚生労働省「離婚に関する統計 離婚の国際比較」
2022年の司法統計によれば、離婚の主な原因は男女ともに「性格の不一致」が最も多くなっています。男性の2位は「精神的虐待」で女性の場合は「暴力」となっており、男女ともに精神的または肉体的なダメージを直接受けることが原因になっています。
順位 | 男性 | 順位 | 女性 |
1位 | 性格が合わない | 1位 | 性格が合わない |
2位 | 精神的に虐待する | 2位 | 暴力をふるう |
3位 | 異性関係 | 3位 | 生活費を渡さない |
4位 | 暴力をふるう | 4位 | 精神的に虐待する |
4位 | 浪費する | 5位 | 異性関係 |
5位 | 性的不調和 | 6位 | 酒を飲み過ぎる |
5位 | 同居に応じない | 7位 | 性的不調和 |
8位 | 家庭を捨てて顧みない | 8位 | 浪費する |
9位 | 家族親族と折り合いが悪い | 9位 | 家庭を捨てて顧みない |
10位 | 生活費を渡さない | 10位 | 家族親族と折り合いが悪い |
11位 | 酒を飲み過ぎる | 11位 | 同居に応じない |
12位 | 病気 | 12位 | 病気 |
令和5年 司法統計年報(家事編)第 32 表 「婚婚姻関係事件数《渉外》―申立ての動機別申立人別」より作成
離婚後の母子家庭の手続きと支援
離婚後にはさまざまな手続きが必要になります。いざとなった時に慌てないように、離婚届を提出する前にあらかじめどのような手続きが必要か、調べておくことをおすすめします。
離婚後に母子家庭となり生活が困窮して苦しい状態になった場合に、利用できる支援や手当があります。国や各自治体には母子家庭の生活を支えるための、さまざまな制度が整備されているので、積極的に活用しましょう。
母子家庭は年々増えている?
母子家庭は過去30年間増加傾向が続き、平成23年度の調査では母子世帯数は約124万世帯となっています。ここ5年間は横ばい傾向ですが、令和3年度の母子世帯数は約120万世帯で、昭和58年度から、約1.5倍増えています。
厚生労働省「全国ひとり親世帯等調査(旧:全国母子世帯等調査)」より作成
<参考>父子家庭の割合
平成5年から令和3年までの、ひとり親世帯のうちの父子世帯の割合です。
厚生労働省「全国ひとり親世帯等調査(旧:全国母子世帯等調査)」より作成
母子家庭の平均収入
厚生労働省の「2022(令和4)年 国民生活基礎調査」によると、母子世帯の母親の86.3%が就業しており、そのうち正規の職員・従業員として働いている人は48.8%。38.8%の人はパート・アルバイトとして勤務しており、高い収入を得にくい状況にあるといえます。
令和3年の母子家庭の平均所得は328万2千円。このうち給料などの稼働所得は270万6千円です。その他の主な収入は、公的年金や児童手当などの社会保障給付金となっています。
母子家庭の収入の内訳
稼働所得 | 270万6千円 | 82% |
年金以外の社会保障給付金(児童手当など) | 40万9千円 | 12% |
公的年金 | 10万2千円 | 3% |
仕送り・企業年金・個人年金・その他 | 6万3千円 | 1% |
厚生労働省「2022(令和4)年 国民生活基礎調査の概況」より
各種世帯の意識調査では、母子世帯のうち75.2%が、生活が「たいへん苦しい」「やや苦しい」と感じており、一般世帯や高齢者世帯に比べ、高い割合となっています。
出典:厚生労働省「2022(令和4)年 国民生活基礎調査の概況」
貧困家庭(生活保護家庭)における母子家庭の割合
厚生労働省の「令和3年度被保護者調査」によると、生活保護家庭は全国で約162万9千世帯、そのうち母子世帯が約7万1千世帯で、全体の約4.3%となっています。
厚生労働省「令和3年度被保護者調査」より作成
令和3年度の厚生労働省「全国ひとり親世帯調査」によれば、母子世帯約111万世帯のうち、生活保護を受給している世帯は約10万2千世帯で、全体の約9.3%です。
生活保護制度は生活が困窮している人に対し、困窮の程度に応じて必要な保護を行い、健康で文化的な最低限度の生活を保障するとともに、自立を助長することを目的とした制度です。
離婚後に母子世帯となって、仕事と子育てとの両立が難しいために十分な収入が得られずに困窮している場合、一定の条件を満たせば生活保護の支給を受けることが可能です。
受給することで生活が安定し、医療費などのサポートが受けられるなどのメリットがあります。また、年金などの負担がなくなり、義務教育の費用が扶助される、などの利点もあります。
一方で、預貯金ができない、自動車の所有が難しい、家賃上限があるため借家が選びにくい、ぜいたく品の購入や賭け事、借金などが制限される、などのデメリットがあります。
婚姻中から経済的な自立ができていれば、離婚後の母子家庭でも安定した生活を維持できる可能性は高いです。しかし、離婚後に就労を目指す場合、必ずしも正規雇用に就けるわけではありません。
子どもが幼い場合、働ける時間に制約が生じやすいため、フルタイムでの勤務が難しいことが多く、雇用者側も正規雇用で雇うことに不安を抱きます。そのため、パートやアルバイトなどの非正規雇用に就くしかない場合があり、十分な収入が得られない可能性があります。
生活保護の不正受給に対する世間の厳しい意見もありますが、子供とともに経済的な困難を避けたいのであれば、申請を検討することをおすすめします。
母子家庭の手続きと支援
離婚後に必要な手続き
世帯主の変更・住民票異動届の提出 |
健康保険の変更手続き |
年金の変更手続き |
印鑑登録の変更 |
免許証の書き換え |
年金分割の手続き |
パスポートの書き換え |
銀行口座の名義変更 |
各種カードの住所名義変更 |
郵送物の転送手続き |
不動産や自動車の名義に関する手続き |
生命保険や学資保険の名義変更 |
入籍届
(旧姓に戻り子どもを自分の籍に入れたい場合) |
子の氏変更許可の申立て
(子どもと自分の姓を同じにしたい場合) |
小・中学校転校の手続き
(子どもの転校が必要になった場合) |
母子家庭が受けられる手当・支援
児童手当 | 0歳から中学卒業までの子どもを養育している人に支給され、子どもの年齢によって支給金額が変わる。 |
児童扶養手当 | ひとり親世帯で養育される子ども(高校卒業まで(障害のある子どもの場合は20歳未満))の生活の安定のために支給され、親の所得によって全額支給か一部支給、または不支給かが決まる。 |
児童育成手当 | 高校卒業までの子ども(障害のある子どもの場合は20歳未満)を養育しているひとり親家庭に支給される。(都制度) |
生活保護 | 生活が困窮している人に対し、健康で文化的な最低限度の生活を保障し自立をサポートするための制度。援助してくれる人がいないことや資産を一切持っていないことなど細かい受給条件が定められている。
扶助内容には、生活・住宅・教育・医療・介護・出産・生業・葬祭扶助があり、受給金額は住んでいるエリアや収入、家族構成などにより異なる。 |
ひとり親家庭住宅手当 | ひとり親世帯で18歳もしくは20歳未満の子どもを養育している人が受けられ、家賃の一部を補助してもらうことができる。自治体によって制度がないところもあり、自治体により手当金額が異なる。 |
ひとり親家庭等医療費助成制度 | 高校卒業までの子ども(障害を持っている場合は20歳未満)を養育しているひとり親が受けられる。親や子どもが医療機関の窓口で支払う医療費の自己負担分を自治体が助成する。親の所得が限度額以上の場合は不支給となる。助成内容は自治体によって異なる。 |
乳幼児や義務教育就学児の医療費制度 | 子どもが医療機関を受診した際に支払う医療費のうち、自己負担分を助成してくれる。幼稚園児や保育園児は「乳幼児医療費助成制度(マル乳)」、小学1年生から中学3年生の子どもは「義務教育就学児医療費助成制度(マル子)」が適用される。自治体によって制度のないところもあり、自治体によって子どもの対象年齢や親の所得制限などが異なる。 |
特別児童扶養手当 | 障害のある子どもの福祉増進を図るために、20歳未満の障害児を養育している親に支給される。 |
障害児福祉手当 | 20歳未満の重度の障害のある子どもを養育している親などが受け取れる。 |
母子家庭の遺族年金 | 配偶者が死亡し、かつ18歳未満の子供または20歳未満で障害等級1級または2級の障害状態にある子供と同居している家庭が対象となる。
支給対象に年間850万円以上の収入または年間655万5,000円以上の所得がないことが必要。 |
減免と割引手当
寡婦控除 | 離婚や死別などで夫と離れて単身で生活をしており、かつ生計を同じくする子供がおり、その子供の総所得金額が38万円以下の場合
離婚や死別などで夫と離れて単身で生活をしており、かつ合計所得金額が500万円以下の場合 |
国民健康保険の免除 | の母子家庭に限らず全ての人が対象となりますが、前年より所得が大幅に減少したケースや病気や怪我などで生活が困難に陥ったケースでは、国民健康保険の免除が用意されています。 |
国民年金の免除 | 所得がない、もしくは少なく年金を収めることが難しい場合、免除が受けられる。 |
電車やバスの割引制度 | 児童育成手当を受給しているケースに対して、各自治体が設定している割引制度。市区町村によって異なるが、JR通勤定期乗車券は3割引などの自治体が多い。 |
粗大ごみの手数料の減免 | 市区町村により、児童扶養手当受給家庭、
特別児童扶養手当受給家庭、生活保護世帯などの世帯が減免を受けられる。 |
上下水道料金の割引 | 市区町村により、児童扶養手当受給家庭
特別児童扶養手当受給家庭などが基本料金の割引を受けられる |
保育料の免除や減額 | 4月1日時点の保育所入所児童の年齢と保護者の前年所得額または住民税金額によって決まる。特に、母子(父子)家庭などで所得が低い世帯については保育料が無料や減額になる場合がある。 |
自立支援訓練給付金 | 母子(父子)家庭の自立支援を促すことを目的としている制度。「自立支援教育訓練給付金」と呼ばれ、雇用保険から教育訓練給付を受給できない人が対象となる教育訓練を受講し、修了した際に支給される給付金。
20歳未満の子供を扶養している母子(父子)家庭の母又は父で以下の4つの条件を全て満たす人が対象。 児童扶養手当を受給している又は同等の所得水準である 雇用保険法における教育訓練給付の受給資格がない。 就職経験・スキル・取得資格の状況などを考慮し、適職に就くために教育訓練受講が必要。 これまでに同様の訓練給付金を受給していない。 |
参考:「ひとり親が受けられる手当一覧|児童扶養手当以外の補助とは」 「母子家庭(シングルマザー)が使える17の手当・支援制度|金額や条件も解説」
まとめ
離婚が必ずしも貧困につながるわけではありませんが、後先を考えず、勢いで離婚をしてしまうと、母子家庭となった時に、予想外の経済的困難に直面する可能性があります。事前にしっかりとした生活設計を立てた上で、離婚を目指すことをおすすめします。
結婚をしていても、離婚だけでなく、夫の病気や失業などにより、夫の経済力に頼り続けられる保証はありません。何が起こるか分からない時に備えて、10代のうちから職業設計を立てるなど、経済的に自立ができるような取り組みを始めておくことが大切です。
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